JAZZ 設 定 |
人物紹介 (第三項) |
南部農園主の息子。長男ではないが、南部独特の保守的な家庭環境において裕福に育つ。 人種としては典型的なアングロサクソン系。(イギリス系の初期の移民の子孫) 保守的な家庭環境の中での守られる事への反発と、若さからくる自分の将来の姿への憧れ、 傷つけられる事なく育った彼の中に幼さに似た無邪気さと、それ故の残酷さを合わせ持っている。 彼の父親の経営する農園には大勢の黒人の小作人達がいたと思われる。 (黒人奴隷の流れをくむ人達と考えていいと思う) 彼は特有の無邪気さと人なつこさで、彼等とも親しく接していたと考えたい。 家族達はそれを心良く思っていなかっただろうし、小作人達も真実彼に心を許していたかは疑問。 しかし小作人達との交流が、彼を北部へと導いたと考える。 人種間でのこだわりはないと、彼は思っているが彼の黒人種や少数移民である他の白人種(特に東ヨーロッパ系) に対するものは、やはり南部のアングロサクソン系の考えそのものである。 (自分達がいるから。自分達が養ってやっているんだ。自分達のおかげでお前達は生きて行けるんだ。 自分達の考えがすべて正義である。)(自分達=アメリカ人と考えても良い) ボーイは善である。しかし善であるがゆえに誰よりも彼は悪でもある。人を殺す、これは悪である。 しかし正義のために人を殺す、これは善である。客観的に見た、この大きな矛盾こそが主題と考えたい。 保守的な両親への反発。大恐慌の家への影響。若さ故の夢と希望に胸膨らませて北部へやって来た。 (彼は有名になりたいスターになりたい。) しかし、大恐慌下のニューヨークは食べる物にも事欠く、酷い状態だった。 飢えと寒さを凌ぐために忍び込んだクラブで、ピアノの音に誘われて出て来た所から、彼の運命が動き出す。 ピアノ弾きに対しては最初は尊敬と親しみを。しかし次第に軽蔑と蔑みの感情をあらわにしていく。 レディに対しては憧れを(彼は恋、愛情だと思っているが)。しかし現実は物珍しさだったのかもしれない。 彼の知って居る黒人女性に無い、気持ちの気高さ(気位の高さ)それに見合う美貌に魅かれたにすぎない。 (白人の血が入っているためか) オーナーに対しては、仕事と住まいなど世話をしてくれたことで恩に感じては居るが、強くどうと言う事もない、 雇主とクラブダンサー兼バーテンボーイというだけの関係。 しかし最後に、自分が利用されて居ると知った時、彼にとっての正義が牙を向く。 |
南部の小作人の息子。父親、祖父共に不明。多分雇主筋の白人が父親と思われるが、仕事を与えて僅かな 賃金で働く黒人の小作人の女が生んだ子供など、息子として迎える気など爪の先程も無く、使用人として 雇い居れるのがせいぜいだったと思われる。 小作人達は、過酷な労働の後で、歌ったり演奏したりするのが楽しみであったと言われる(ジャズの始まり) 彼もそんな環境の中で音楽に目覚めていく。(基礎的な訓練を受けた事はなかったのではないか) 大戦に兵士として参加する事で、小作人の生活から抜け出そうとする。 もちろんアメリカ人としての愛国心からの参加ではあるが、打算的な目論見があったことは容易に考えられる。 大戦中はアメリカ軍の前線に送られる。そこでオーナーと、ストーリーのキーマンである紳士(軍の上官) との出会いがあった。 戦闘は過酷であり、正義のためと言うより生き残るために敵を(人を)殺すしかなかった。 そんな中で他の兵士達の不満や苛立ちの捌け口にピアノ弾きと、オーナーがなっていた。 (訓練と称しての苛め)そのリーダー格が紳士。 何時終わるとも知れない塹壕での生活、止むこと無い砲弾の音、本来純粋で生き生きとした心の持ち主だった 彼の精神は、そんな日々の中ですり切れ疲れ果てて行った。 大戦が終りアメリカに戻った彼は、そのまま北部へ移り住んだ。 最初は音楽をやりたいと思っていたのだろうが、戦争で傷ついた彼の精神は南部でのあの生き生きとした メロディを演奏する事は出来なかった。 オーナーが店を営業することになった。ミュージシャンとして雇うと言ってくれていたのだが、その実 用心棒として雇い居れたことになる。彼はここでもまた生きるために、自分の居場所を確立するために殺し を続けなければならなかった。そんな、日々の生活の中で、彼を寡黙で人を寄せ付けない人間に変えていった。 彼は自分が悪である事を知って居る。いや、悪になってしまった事を理解して居る。 だからこそ彼の本質は善であり続ける。善であるがゆえに、悪にならざるをえない自分を、嫌悪し慈しみ。 そして追い詰めて行く。 ピアノ弾きにとってのボーイは、置いて来た自分の過去の幻であり、見続ける事を諦めた夢の具現者でもある。 (懐かしい南部の香りを運ぶ者でもあるかも) ピアノ弾きにとってのレディは、愛しい者であると同時に,決して手に入らない存在でもある。 よく似た境遇に生まれ、しかし正反対の生き方をしている彼女に強く魅かれているが、決して心が寄り添う こともないと分かっている。(想い合っている部分もあるが二人は平行線を辿って行くだろう) ピアノ弾きにとってのオーナーは辛く苦しい戦争を共に戦った戦友であり、地獄の日々を、その記憶を唯一 分かち合える存在でもある。北部では働き口もままならない南部黒人出身のピアノ弾きに、仕事と住まいを 与えたのも彼だし。何より黒人種であるがゆえに、疎まれ続けた彼を受け入れてくれた白人種の (イタリー系とはいえ)オーナーは、彼にとっての初めての友でもあった。現在の生活。唯一信頼する友を、 守るために彼は罪を重ねて行く。 紳士(大戦中の上官)は、ピアノ弾きとオーナーにとって、忘れ去りたい過去の象徴である。 紳士はボーイと同じくアングロサクソン系の出身であり、現在は禁酒法の中甘い汁をすする監察官でもある。 彼の登場が二人を過去の記憶へと引き摺り込んで行く。 それを葬り去りたいがために彼を抹殺した事が、二人の間に拭い切れない記憶をうえつけ決別へと導いて行く。 |
彼女も南部出身。黒人の娼婦の娘として生まれる。母親 祖母の仕事がら、彼女もピアノ弾きと同じく父親を 知らない。客である白人の誰かであると信じている。彼女も北部へ出て来るまでは、娼婦として客を取って 居たと思われる。母親を嫌悪しながらも思い出す事もあるだろうし、会う事もない父親の影を心の何処かで 追っている。女性らしい面も潜ませて居る。 彼女はとにかく野心家である。自分のためならどんな事でもやってのけるだろうし、そのために誰が犠牲に なっても構わないと思っている。しかし黒人種であるがために思うように自分の夢に近付けずに苛立ち焦り、 だが時代が白人種に対してさえ厳しい時代だったためにオーナーの下で力を蓄える事を選んでいた。 (大恐慌下では、食べるための仕事がある事が珍しかった) 彼女は悪である。それは自分でも良く分かっていたし。悪である事がそのまま罪であるとは考えていなかった。 アメリカという国の、アメリカ人達の自分達にしてきた事柄に比べれば自分の犯してきた事は、裁かれる べき事とは思えなかった。そして、彼女もまた自分がアメリカ人であると言う事にこだわっていた。 (アメリカ国内で出生すればアメリカ人である。しかし人種間の問題は根深いものがあった。) 彼女は自らの美貌と体を武器にして、少しでも有名になりたかった。そして自分を見下し、 馬鹿にして来た白人種の人間達を、今度は自分が見下し踏み付け支配したいと願って居た。 (現実的にはかなり困難で、ある意味空しい願望だったと思われる) レディとピアノ弾きの関係は、よく似た環境に生まれ育ち、それでいて正反対とも言える生き方をして来た と思われる。彼女はピアノ弾きに対して好意よりも苛立ちを感じて居たし、でも彼の才能を信じたい面もあった。 そして出会うことのない父親の影を彼に重ねて居た。(多分殆ど無意識だったと思われる。) 人は惨めだと分かって居ても自分自身は捨て去れない。彼女にとってピアノ弾きは、捨ててしまいたい、 忘れてしまいたい、惨めで哀れな自分の姿であり。だからこそ彼に本当に、やりたいことをやって欲しいと 心の片隅で願って居る。 レディとボーイの関係。生まれも育ちも違いすぎる二人である。ボーイが一目で彼女に魅かれたのに対して、 レディは彼に敵意に似た感情を覚える。(望んでも手に入らない物を、生まれながらに持っている彼は、 レディにとって充分に憎しみの対象となった。)だからこそ、彼を単なる白人の一人としてでなく、 人間として男として仕事のパートナーとして認め始めた時に、彼女の中で少しずつ何かが変わって行く。 レディとオーナーの関係。本質的には似た者同士自分のためにすべてを利用し尽くす生き方をしてきた。 レディはオーナーを利用して居るし。オーナーもレディを利用して居る。もちろんピアノ弾きと同じく体の 関係はあるだろうが極めてドライな関係だと思われる。 |
イタリー系アメリカ人。北部の労働者階級の出身。 (両親がイタリア移民であり彼はアメリカ本国で生まれている) 貧しくそして同じ白人系からも差別を受けながら成長した。 そのためか他人を信用する事なく己だけを第一に生きて来たと思われる。 彼は登場人物の中で誰よりも、アメリカ人である事にこだわって居ただろうし。 イタリー系である事を好ましく思っていなかった。 (彼にとってイタリア移民の両親は汚点であり今では忘れ去ったつもりの存在でしか無かった。) 貧しさは惨めさである。悪じに手を染めようと彼を愛し見つめてくれる人間がいなくなろうとも、 彼にとっては金がすべてであった。どんな方法を使ったとしても、世の中金をより多く持っていた者が 勝利者だと信じて居る。 だから彼は悪である。表面的には誰よりも善の仮面を着けながら、自分が悪である事を知っている。 しかしそれはレディと同じく世の中の責任だと考えるし、何よりも貧しさのせいだと思っている。 彼にとって自分以外はすべて道具。目的のために人を殺すこともまた殺させることも罪だとは考えては 居ない。 そんな彼が大戦に参加した理由としては、アメリカの英雄になりたかった。イタリア軍に志願する事も 出来たが、イタリー系アメリカ人としてイタリア軍に参加するより。アメリカ人としてアメリカ軍の英雄に なりたかった。(第一次大戦時はイタリアとアメリカは同盟国である) だが、大戦時の現実は彼にとってより厳しいものだった。軍内部での訓練と称しての苛め。 イタリー系アメリカ人であるがために、階級の昇進は有り得なかったし。 (イメージとして)戦争の実情は彼の思い描いて居た英雄とは程遠いものだった。 彼にとって大戦での経験は何にも勝る屈辱であり、恐怖でもある。 (だからこそ、記憶の彼方に押し込めていたものが、紳士の登場とピアノ弾きの変化によって呼び覚まされる 形になった。) オーナーにとってのピアノ弾きは、唯一見下して付き合える存在であり。共に地獄を見た関係だからこそ、 手元に置いて利用しやすい男であると思っている。ピアノ弾きが彼にとって利用価値を無くした時、 そのまま使い捨てる事ができる。そんな男である。 オーナーにとってのレディは、自分を見透かすような彼女に少なからず親しみと、畏怖の念を持って居る。 本質は似た者同士である事も理解しているし、お互いをどう利用し尽くすか常に探っていると考えられる。 (レディの所でも書いたが男女の関係であっても極めてドライな関係だったと思われる) オーナーにとってのボーイは憎しみの対象でもあり。何よりも自分に跪かせる事に喜びを与える者でもある。 ボーイの純真さは彼に無いものであって、目障りでもあるが、それだけに利用しやすい存在として写って居る。 裕福な家庭環境に育ち、人を疑う事を知らない世間知らずなお坊っちゃんだからこそ彼は、 ボーイを手元に置いて何時か機会があれば、汚せるだけ汚して踏み付けにしてやりたいと言う欲求すら あったのではないか。自らがアメリカ人達に(この場合アングロサクソン系を中心に差す。) 長い間屈辱的な扱いを受けて来た腹癒せと考える。 |
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